新聞などで見られた方も多くいらっしゃると思いますが、平成29年4月6日に、法定相続分の預金払戻しの可否について注目する判例が出ましたので、ご紹介させていただきます。
去る平成28年12月19日に、最高裁判所は、お亡くなりになられた方の預金については、法定相続人ごとに、各法定相続分で分割されるとしていた従来の判例を変更し、預貯金は法定相続分で当然に分割されるものではなく、「遺産分割」の対象になると判断したところです。
これまでの実務の取扱として、変更前の判例どおり法定相続分の支払いに応じていた金融機関とそうでない金融機関とに対応が分かれていたところですが、この判例が出たため、今後は、法定相続人が複数いる場合において、遺産分割を経ることなく、各人がその法定相続分に見合う請求をしても、金融機関は対応しないと思われます。
もっとも、平成28年12月の最高裁判所の判断は普通預金などについてのものであって、定期預金について判断が示されていなかったところ、今回の最高裁判所においては、定期預金についても相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない、つまり遺産分割の対象となると判断しました。
その結果、普通預金も定期預金もいずれも遺産分割の対象となるとするのが判例の立場となりました。
預金の払い戻しが認められないということは、例えば、相続が発生し、預金が凍結した場合、従来であれば法定相続分相当額の引出しを認めていた金融機関も今後は引出しを認めてくれなくなることから、葬儀費用を亡くなられた方の預金から下ろしたりすることができないということを意味します。
今後は、相続の発生後すぐに必要となるお金については、生命保険や家族信託を活用するなど、あらかじめ対応をしておく必要があります。
当センターでは、判例の変更や法律の改正の動きも随時チェックしながら相談に対応しておりますので、分からないことや気になることがあればお気軽にお尋ねください(相談は無料です)。